SSブログ

小林秀雄 『本居宣長』   vendredi 28 oct.05 [■Livre]

本居宣長〈上〉

本居宣長〈上〉

  • 作者: 小林 秀雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫

本居宣長〈下〉

本居宣長〈下〉

  • 作者: 小林 秀雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫



数年間気に留めていたまま開くことのなかった、小林秀雄氏の『本居宣長』を読了。
この長大な論究は小林秀雄氏の思想論ではなく、丹念に宣長のテクストを追った小林氏の思考ノートといえる。

本居宣長の思想を知るには、本書を読むよりも、「古言」を「漢意(からごころ)」に優位させ、「神の道」「皇国」たる日本の自己同一性を確立するという作業をした、「古事記伝」の「直毘霊」(なおびのみたま)を読むのが良かろう。政治権力上、安寧な社会を維持させる源泉であるとしている皇統の連続性、それ自体が権力の正当性の起源であるとし、中国権力の論理的基盤たる言説の排除を宣言したのが、「直毘霊」であり、「古事記伝」であるだろう。

それが日本の思想の脆弱さに与えた影響か、或はもともと持っていた属性なのか議論の余地はあるが、中国の思想を批判し排除するため、儒教的な言説を否定し、ロゴス自体を否定してしまった。日本的なるものに批判が向けられるときに、反論することもせず、反論することは「漢意」であり論理であるからとなにもしない。宣長が上田秋成の批判に口を噤んだのはその体言であり、小林氏が自己言及を避けているのは、まったくその後継者として正しい。トートロジーの陥穽に落ちずに生き残るのは無視に如かない。

「古事記伝」が日本の近代イデオロギーに影響をあたえたことについては今更言うまでもないが、宣長が「古事記伝」でなした、テクスト読解の認識論的断絶の顕在化は、思想史的に更に言及されてもよいだろう。

直毘霊・玉鉾百首

直毘霊・玉鉾百首

  • 作者: 村岡 典嗣, 本居 宣長
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989
  • メディア: 文庫


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。