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アルンダティー・ロイ収監  jeudi 7 mars 02 [■Livre]

朝日新聞によると Arundhati Roy  アルンダティー・ロイが法廷侮辱罪で収監されたという。

ロイは自国インドのサルダル・サロバル・ダム建設による環境破壊に対し抗議行動を展開、建設を容認した最高裁判決を批判し (「公益の名の下に」1999年7月)、法廷侮辱罪に問われたのだ。最高裁の判決は、「言論の自由は、司法の尊厳を貶めることまで認めてはいない」としているが、 ブッカー章受賞(’97)作家の言動に対して禁錮刑(1日、罰金2000ルピー(6000円))という実刑を科すということは、実質的に言論の自由を封殺しているのに変わらない。

またロイは1998年5月のインド、パキスタンの核実験を反対し、その年の7月に「想像力の終焉」(「論座」1999年7月号) を発表し、ヒンズー・ナショナリスムの拡大を批判した。その2論文を纏めたものが、『わたしの愛したインド』(築地書館 2000年)である。その出版に対してダム推進派は抑圧を加えているらしいが、今回のロイの収監は政府が行った言論弾圧に他ならない。

9・11以降、ロイは日本語に翻訳されているだけでも、「戦争は平和」“War is Peace”(「世界」2002年1月号)、「『無限の正義』の算術」(『発言』 朝日出版社  2002年1月)などで世界貿易センタービルテロ事件とアメリカのアフガニスタン爆撃を、「報復」、「文明の衝突」と捉える短絡を避け、アメリカによる新たなテロだと断罪した。アフガニスタンの山中にウサマ・ビンラディンとオマルを捕獲しに行くことと、B52による空爆やトマホークを撃ち込むことは位相が違うのだという。そのうえで軍産複合体ときわめて密接に結びついたブッシュ政権中枢を浮かび上がらせ、カスピ海における利権、ビンラディンとの「共犯関係」を暴き出している。そして、アメリカのその攻撃のボタンを押したブッシュはビンラディンの「分身」であり、その関係は「アメリカの大統領の暗いドッペルゲンガー」 だと言い切っている。

ロイは、インド政府にしても今回の軍事行動に乗じてアメリカとの関係の緊密化をはかり、国内に米軍基地を造らせようとしていることを糾弾してみせる。インドがアメリカとの関係を過度に結ぶことは国内情勢の過激化を招くと見たのだ(実際今年になってからの 宗教対立で数百人が犠牲になっている)。

結局インド最高裁の判決はインドの言論自由の危うさを露呈させることになった。小説『小さきものたちの神』(1997年)においてカーストや女性問題に迫りブッカー賞を得た女性作家は、インドの改革の先鋒であることと引き換えに、インド政府の要注意人物になったといえる。

わたしの愛したインド

わたしの愛したインド

  • 作者: アルンダティ ロイ
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 単行本


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