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■マルガリータ・フォン・トロッタ『ハンナ・アーレント』    samedi 30 nov,2013 [■Cinéma et Musique]

岩波ホールでマルガリータ・フォン・トロッタの『ハンナ・アーレント』を観る。
イスラエルで行われた、ナチのユダヤ人虐殺に於けるアイヒマンの裁判について、アレントの記録である。

アレントは、アイヒマンの死刑を要求する。しかしながら、ユダヤ人がアイヒマン裁判を行うことの起源、有効性を批判する。被害者は600万のユダヤ人であり、その名においてアイヒマンを裁こうとしても、そこにこの裁判の根拠があってはならないとする。

アレントは「罪」とは二つあると考える。戦時中の残虐行為・虐殺などを「人道に対する罪」とみなす。そして、人種や民族などを殲滅し地球上からその集団を抹消してしまうこと、その権利が自分にあると認める犯罪を「人類に対する罪」と規定する。ナチの行ったユダヤ人虐殺がこれにあたる。アレントはこの「人類に対する罪」で、ユダヤ人の名においてではなく人類全体によってアイヒマンを裁くべきだとする。それゆえイスラエルで行われている裁判は、アレントの論理では否定される。もちろんアレントはナチにより収容所に収監され、フランスに逃れアメリカに逃れてきたユダヤ人であり、アイヒマンの極刑を望んでいる。しかしだからこそ、法概念を歪曲することを許さないのだ。

アレントの講義最後の語りはナチに対する人類全体の抗議の言説である。にも拘らずそれが正当であっても、600万の家族を虐殺されたユダヤ人は、分かっていてもそれが許せないのだ。それが記憶をもつ人間であり、血の通った人間なのだ。

マルガリータ・フォン・トロッタさんの作品は1983年にユーロスペースで観た「鉛の時代」以来だ。なんと30年ぶりの邂逅(「ローザ・ルクセンブルク」は未見)

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