■「夏目漱石の美術世界展」 samedi 6 juillet 2013 [■museum]
東京藝術大学大学美術館で開催されている「夏目漱石の美術世界展」が後2日となったので、猛暑の中一念発起して上野に向かう。
メディアは東京新聞とNHKの共催なのであまり拡散はされてないが、西洋画ではリヴィエアーの「ガダラの豚の奇跡」、ジョン・エヴァレット・ミレイの「ロンドン塔幽閉の王子」、そしてウォーターハウス「人魚」など、日本画では酒井抱一の重要文化財「月に秋草図屏風」をはじめ気になる作品がそろった。抱一の作として「虞美人草」のなかで話題にされている「虞美人草図屏風」を荒井経さんが試作しているのも非常に面白く、また蠱惑的な作品だった。
そして漱石の書籍の装幀や挿画という作品群、なによりも岩波書店から出されてあった漱石の手書き原稿は一見の価値はあるだろう。
しかしながらこの展示会でもっとも見入ってしまったのは、木島桜谷の六曲一双屏風「寒月」であった。寒空に輝く下弦の月と竹林に徘徊する狐が描かれている。特に右雙の色を失った月の輝きと竹林の輝きを対比させる静寂は言葉を呑むばかりであった。敢えて言うなれば左雙の狐の色も邪魔になっているのではないか。狐の代わりに靏、いや白蛇の一匹でも描きこめばこの屏風の評判は(評価ではない)、変わっていただろう。
下の写真は実際の屏風の色とは異なる。月の光や枯れた下草に付く雪は銀を使っているようだった。
コメント 0