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花は心、種は態   samedi 1 avril 06 [■能狂言]

夕刻、櫻の薫る神田川を歩いてみると、井の頭池に発する神田川は雪を冠する山系もないのに、川面を滑る櫻花は意外にはやい。世阿弥の「櫻川」でもいうように、春の川は櫻花を誘うのでしょうか。満開の櫻のもとをそぞろ歩く人たちも楽しげに佇んでいるようですが、それでもどことなく寂しげなのは櫻のせいでしょうか。

櫻は古代から秋の稲の相応として、神聖で生産の象徴として捉えられてきたことは、稲作の民俗学的なテキストを多少とも読めば理解できます。19世紀末以降国家虚偽意識と結びつけられて、歪曲された歴史をもたされることになりましたが、散り方に美意識を見出したのは西行の時代から続く見方でもあります。桜川 花は心、 種は態 能 ヤマザクラ 花見 満開 サクラ

樹齢1500年といわれる岐阜県根尾村の淡墨桜をはじめ、福島県三春の滝桜、山梨県武川村の神代桜など、巨樹のもつ生命力もまた私たち現代人に新しい櫻の意義を与えてくれているといえましょう。「風姿花伝」で世阿弥が語るように、老いてみて咲く花の意味は、散ることだけでなく老醜を晒しながら生きぬく生命の尊厳ということも教えてくれるのではないでしょうか。老いということは皺が増え醜いだけでなく、それ自体に尊厳があるのです。

色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける  小野小町 (古今集巻十五)

 

左:新宿区下落合おとめ山公園
右:長野県戸隠、古池から黒姫山への登山道の脇に咲いていた櫻。山櫻だと思うのですが、お分かりの方がいらっしゃいましたらお教えください。


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コメント 2

Tompei

はじめまして。トラックバックありがとうございます。

「櫻」という字を見ると、昔昔の小学校時代に担任の先生が「二貝の女が木にかかる(2階の女が気にかかる)」と教えてくれたことを思い出します。あ、もちろん、もう「桜」と書いていた時代ですよ。

以前、おとめ山公園の近くの小さな会社に勤めていたことがあり、桜咲く公園脇の道を通っていました。あのあたりはとてもいい雰囲気ですよね。
by Tompei (2006-04-03 08:39) 

Wasabi

トラックバックありがとうございます♪
桜って、ボクたち日本人の歴史をずっと眺めてきた花なのかもしれせんね(^^)
by Wasabi (2006-04-04 01:02) 

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