『辻まこと全集』 dimanche 25 juin 2000 [■Livre]
何気なく取った『辻まこと全集』(みすず書房)の第2巻に、独文の池内紀氏が解説を書いている。そのなかに辻まこと氏が書いた文を紹介している。正確には覚えていないが、〈自分一人で生きていく〉という言葉だった。たとえば、山行の辛い時、誰でもこの辛さは何のためなのかと自問するが、多分答えを出さずに登頂し、下山する。我々は、そしてそれよりも辛い日常生活に帰っていく。そのとき一生一人で生きていくという言葉が出てくる。辻まことさんの幼年時代の境涯は不勉強だが、社会のなかで自分一人で生きていくと言わなければ、生きていけなかったという逆説的認識にならざるをえない。
あるいは、青年期、何のために生きるかなんて誰にも分からない。しかし、その宙ぶらりんのペンディング状態、いわば、執行猶予の生をいきねばならない。その解答はありやしないのだが、あるかのように幻想を持ち、観念の陥穽に落ち込む。例としてはカルトに入る青年、偏差値にしか価値を見ない秀才。その青年の愚かさを笑っても意味などない、しかし、だからこそ宙ぶらりんの答えの無い世界を生きぬく実践的理性を身に付ける想像力を持たねばならない。
2000-06-25 22:39
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