■アンジェラ・ヒューイット「平均律クラヴィーア集」 mardi 22 septembre 09 [■Cinéma et Musique]
新聞を開くと、大江健三郎さんの「定義集」で、バッハ「平均律クラヴィーア集」のエピソードを書いている。
46年まえ光さんが誕生したころ武満徹さんと聴いた「平均律」が、吉田秀和さんの「私の試聴室」(7月25日NHKFM)で掛けた現在の女性ピアニスト、アンジェラ・ヒューイットの「平均律」の音だと気づいたということを語っている。もちろん1958年生まれのヒューイットが、その時の「平均律」の演奏者であるはずがないことは大江さんも言っているが、その旋律や音が親和的な響きをみせていたのであろう。その時の音と現代女性演奏家の音の繋がりにプルースト的「円環」を感じる大江さんに、われわれも30年間の長きに亙る大江健三郎読書体験の連続を感じざるを得ない。
「『円環』を閉じた思いです」という大江さんの言葉は、これから一層頻繁に、豊饒化を伴ってわれわれの前に現れるのだろう。
夜になって、アマゾンでワンクリックした、アンジェラ・ヒューイット「平均律クラヴィーア曲集」(2008年再録版)―"Bach 'The Well-Tempered Clavier' Angela Hewitt new 2008 recording"が届く。グールドと比べるのは愚であるが、8番のプレリュードは特に甘美であります。どちらを選ぶかではなく、それもまた個性なのだ。
Bach: The Well-Tempered Clavier
- アーティスト: Johann Sebastian Bach,Angela Hewitt
- 出版社/メーカー: Hyperion
- 発売日: 2009/04/14
- メディア: CD
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