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■「アマデウス」ディレクターズ・カット版   samedi 16 fev.08 [■Cinéma et Musique]

BS2で『アマデウス』ディレクターズ・カット版を観る。
モーツァルトのウイーン以降の生涯を、宮廷楽長サリエリの回想で描いたもので、ミロシュ・フォアマン監督(たしか、大江健三郎氏はこう発音していた)、1985年日本公開時に映画館で観て以来になる。ディレクターズ・カット版ということで当時より20分長くなっていると言うこと。

神の恩恵を受けた〈アマデウス〉モーツァルトに対する、天才を認知する能力はある音楽的凡人サリエリの葛藤の構図が主旋律であるとすれば、モーツァルトの天才に作曲・クラヴィア・ヴァイオリンを徹底的に教え込んだ父レオポルト・モーツァルトのオイディプスの構図が通奏低音として描かれている。ザルツブルグ大司教の元をモーツァルトが離れることや、妻コンスタンツェとの結婚を好く思っていないことなど、史実に則っている部分での父の抑圧的行動は、劇中では仮面の「ねずみ色の服に身を包んだ痩せて背の高い見知らぬ男」に「レクイエム」を依頼され、それを父の亡霊だと思い込む伏線になっている。モーツアルトの死がサリエリに毒殺されたという説は18世紀からあったらしいが、仮面の男はサリエリではなく、妻を失ったフランツ・ヴァルセック・フォン・シュトゥパハ伯爵の使者であり、未完の「レクイエム」を完成させたのも弟子のジュースマイヤーであるのが史実である。しかしながら、サリエリの秀才の不幸が神と対峙すればするほど若きモーツァルトを抹殺することを自らに許さざるを得ないほどの嫉妬となったのは理解できる。

劇的効果のためだとは諒解するのだが、「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」というオペラを劇中劇として多用しモーツァルトの心理を抉りだしているが、我々には美しいフルート曲やピアノ曲に始まり、「39番」「ト短調」「ジュピター」など人類の遺産と言っていいほどの珠玉の宝物が遺されている。破天荒一辺倒に描かれた「アマデウス」の裏側に、玉のような曲を書くアマデウスがいたということも表現しなければならない。制作当時、アマデウスから人間モーツァルトを描いたという評価もあったが、全体的人間観がない作品だともいえるのである。ミロス・フォアマン

アマデウス ― ディレクターズカット スペシャル・エディション

アマデウス ― ディレクターズカット スペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2003/02/07
  • メディア: DVD

 

モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム

  • アーティスト: ワルター(ブルーノ), リップ(ウィルマ), レッスル=マイダン(ヒルデ), デルモータ(アントン), エーデルマン(オットー), ウィーン楽友協会合唱団, R.シュミット, モーツァルト
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2002/10/23
  • メディア: CD

 


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